村上春樹『騎士団長殺し』はファンタジーだった

こういうことを小説家志望の人間が言うと怒られそうなのですが、わたしは今まで村上春樹さんの小説を読んだことがありませんでした。何かを読んで嫌いになったとかそういうわけでもなく、ただ世間の話題や評判を耳にして、なんとなく敬遠していたのでした。

そのわたしが、今回村上春樹さんの小説を読んでみようと思い立ったのは、敬遠していたのと同じくらい些細なきっかけで、それは単に題名が『騎士団長殺し』だったからです。「デモンズソウル」や「ダークソウル」といったゲームが好きで、小説でもジョージ・R・R・マーティンの『氷と炎の歌』シリーズを愛読しているわたしはタイトルを見ただけで、おお、村上春樹がファンタジーを書いている! と勝手に思い込んで、それであれば読んでみよう、とその上下巻を購入したのです。

わたしは本を買うときに立ち読みをしませんし、ポップや帯も目に入れないようにしています。タイトルだけ見て、いいなと思ったら買う、という一か八かの買い方なので、実際にページをめくるまでは中身は分からないのです。当然、『騎士団長殺し』、いくら読み進めてもファンタジーの気配はありません。そして男女の濡れ場が出てきて、ああ、これは違うなと思い始めたころ、主人公が一枚の絵に出会います。そこに描かれていたのが「騎士団長」でした。それもわたしの思い描いていた「騎士」とはまったく違うすがた形をしています。

しかし、もしかしたら本業は殺し屋かなにかじゃないかと思わせる男が登場し、おそらくヒロインに相当するであろう美少女が登場するにおよんで、わたしはいつの間にか時間を忘れて夢中で読み進んでいました。お話はサスペンスに満ちたミステリーのようでもあり、冒険小説の様相すら見せてきます。そして、実際に「騎士団長」が登場するに至っては、時空も歪みまくって、それこそファンタジーではないかと思わせるような展開です。そこからあとは、初めて村上春樹を読んだわたしが、下巻のラストまで一気読みでした。

読み終わったわたしが最初に思ったこと。それは、『騎士団長殺し』はファンタジーだ、ということでした。読む前に期待した竜や剣や魔法が飛び交うファンタジーではありませんが、例えるならば、『ハリー・ポッター』や『不思議な国のアリス』といった方面のファンタジー。騎士団長は『アリス』の白ウサギでありチェシャ猫ですよ。主人公を摩訶不思議な時空に誘って、そして主人公はおそらく自分の内なる葛藤と戦って、勝つ。「白いスバル・フォレスターの男」はハートの女王だし、免色は帽子屋。「顔なが」はさしずめ三月うさぎといったところでしょうか。ラストに主人公が「元の世界に戻る」という展開も『アリス』や『オズの魔法使い』といったファンタジーを彷彿とさせます。

「村上春樹」初見のわたしはこの小説を論じるつもりはありません。ただ、「大人のファンタジー」として非常におもしろく読めたことは確かです。主人公の年齢からして「あの曲」を懐かしく聴くのはおかしいだろうとか、いろいろと細かい指摘は可能でしょうが、そもそも「不思議の国」では時間も空間も歪んでいるのです。「顕れるイデア」で主人公は旅立ち、「還ろうメタファー」で主人公はカンサスシティーの家に戻ったのです。とても楽しい時間を過ごすことができました。村上春樹の本、全部読んでみようとさえ思いました(実際、『1Q84』を全巻買いました)。

ああ、それからもうひとつ。うちにもひとり、「騎士団長」がほしいなぁ、と思いました。視線を感じて振り返ったら、ちょこんと本棚の上に座ってたりしてくれないかな。

Scrivenerで書いた原稿をCompileで「InDesignタグ付きテキスト」に変換する方法

手順の概要

以前、「Scrivenerで書いた原稿をInDesignで整形する方法」を投稿しましたが、ScrivenerのCompile一発で「InDesignタグ付きテキスト」を作る方法が分かりましたのでメモっておきます(厳密に言うと一発ではありませんが、ほぼ一発です)。手順は以下の通り。

  1. ScrivenerのCompileを設定する
  2. Compile後のテキストを修正する
  3. InDesignで読み込む

ScrivenerのCompileを設定する

ポイントは「Replacements」です。ScrivenerはCompile時に正規表現を使った置換に対応しています。以前の記事ではInDesign側でスクリプトを使ったり、外部エディタで置換したりしていましたが、「Replacements」を使ってScrivener側で置換してしまいます。

1行目の設定は「ルビ」対応です。青空文庫記法の「|○○《○○》」をInDesignタグの「<cr:1><crstr:$2><cmojir:0>$1<cr:><crstr:><cmojir:>」に変換しています。

2行目から21行目の設定は「傍点」対応です。以前の記事のステップ6をScrivenerでやっているだけです。

22行目の設定は段落の頭に「<pstyle:>」というタグを挿入します。

23行目の設定は、なぜか22行目の設定を実行すると「<pstyle:>」が2つ挿入されてしまうので、それを1つにしています。

24行目の設定は、「章単位で改ページ」するための置換です。執筆時に章タイトルの頭に「<章>」と書いておくと、章タイトルの頭だけ「<pstyle:><pbb:Page>」になります。

Compile後のテキストを修正する

CompileしてできたファイルはUTF8なので、SJISに変換する必要があります。変換にあたってお薦めのエディタは「mi」です。機種依存文字やSJISに変換できない文字を一覧表示してくれる機能があるので便利です。SJISに変換できない文字がテキストに含まれていると、UTF8でしか保存されないため、InDesign側で読み込んだときにきちんとフォーマットしてくれません。

「InDesignタグ付きテキスト」はSJISである必要があり、下記の文字列を冒頭に記述しておく必要があるので、追記します。

<SJIS-MAC>
<vsn:12><fset:InDesign-Japanese><ctable:=<Black:COLOR:CMYK:Process:0,0,0,1>>

InDesignで読み込む

あとは出来上がったファイルを、InDesignで「配置」機能を使って読み込むだけです。前回の記事でやりたかった、「ルビ」、「傍点」、「章ごとの改ページ」が一度に自動的に実行されます。

FreewriteとScrivenerを連携させる方法

連携の概要

  1. Freewrite(Postbox)とDropboxを連携させます。
  2. Dropbox上でFreewrite(Postbox)用のフォルダにあるファイルをScrivenerの外部ファイル同期用フォルダに自動的にコピーします。
  3. Scrivenerの外部ファイル同期機能を使ってファイルを取り込みます。

Freewrite(Postbox)とDropboxの連携

Freewriteで書いた内容は、Postboxというクラウドサービスに自動的に反映されます。Postboxでは3つフォルダを使えます。わたしはAをDropbox、BをEvernote、CをGoogle Driveに連携させています。この設定をすることによって、FreewriteのフォルダAで書いた内容は自動的にDropboxの「アプリ/Postbox/A」という場所に保存されます。

Postbox用フォルダとScrivener用フォルダの連携

Dropbox上で、Postbox用のフォルダとScrivenerの外部ファイル同期機能で使うフォルダを連携させます。そのためには、IFTTTというサービスを使います。レシピは画像をご覧ください(クリックして拡大します)。

一つだけ注意点があります。IFTTTは日本語に対応していないためか、日本語を含むファイルパスを認識できません。上記でPostboxとDropboxを連携するとDropboxに「アプリ/Postbox」というフォルダが自動的に作られてしまいます。そのため、そのままではIFTTT上でこのパスが使えません。Macでは「アプリ/Postbox」へのシンボリックリンクをこの例でいえば「Apps/」の下に作成すれば大丈夫です。

Scrivenerからファイルを取り込む

ScrivenerでFreewriteから読み込むファイルを格納するフォルダを作っておきます。ここの例では「Freewrite」という名前で作りました。これを「File→Sync→with External Folder…」から設定画面を開いて取り込み先として指定します

 

Scrivenerで外部ファイルとの同期を実行すると、画像のようにFreewriteで書いたドラフトが取り込まれます。これらの一連のフローが完全に自動化できました。

Freewriteはドラフトを作成するためのガジェットですから、Scrivenerで編集した内容をFreewriteに戻したりFreewrite上で編集することは出来ないですしするべきでもないのでしょう。ファイルをいったん取り込んだら、あとはScrivenerの「Draft」フォルダにコピーして編集をしていきます。

ちなみに、PostboxとEvernoteを連携させることも試してみましたが、IFTTTでEvernoteからDropboxに連携する際にHTMLファイルとしてしか連携できなかったので、断念しました。

『イミテーション・ゲーム』に見る「テーマ」の難しさ

ベネディクト・カンバーバッチが主役をした『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』をAmazonプライムで観ました。第二次世界大戦時のドイツが作った暗号機「エニグマ」を解読した数学者アラン・チューリングの人生を描いた映画です。

素晴らしい映画で感動したのですが、こういうテーマが深くてたくさんある物語を映画で表現するのは難しいのだな、と率直に思いました。ナチスドイツに対抗する暗号分析スペシャリストたちの葛藤、スパイ小説のような軍部や警察との攻防、クロスワードパズル好きなヒロインとの愛、少年期に訪れた愛する友人の死、世界で初めて作られたコンピュータ、ゲイを違法とする当時の法律。テーマとなりうるエレメントが多いのです。これはなかなか監督もテーマを絞りきれなかったのではないでしょうか。

ラストシーンで主人公がゲイであり当時の法律ではそれが犯罪であることが語られ、2013年になってエリザベス女王から恩赦を受けて名誉回復したことが示されますが、最初の印象は、説明っぽいな、とってつけたようだな、でした。それはたぶん、わたしがこの映画を「ゲイ」の天才数学者の物語として観ていたのではなく「エニグマ」を打ち破った天才数学者の物語として観ていたからです。

人の人生はテーマに満ちています。決して単純化することも類型化することもできません。しかし、物語にするためにはテーマを絞らないと観客や読者が混乱したり、せっかくの意図が薄まってしまったりしてしまうのでしょう。この映画の場合、完全に天才数学者の冒険小説、スリラー、サスペンスにしてしまうか、ひとりのナイーブな男の内面と性と人生を描くのか、どちらかにすべきだったのかもしれません。

わたしはここで大きな教訓を得ました。読者を喜ばそうとして盛りだくさんにしてはいけない。執筆者に能力が足りない場合、読者は消化不良を起こしてしまうかもしれない。テーマを絞ること、絞った上でそれにそって徹底的に書き込むこと。その方が読者にとっても親切ですし、執筆者にとっても本当に伝えたいことが伝わるのでしょう。

わたしは自分の小説を書く際に、いつも悩んでいることがありました。それは、「梗概」を書くことが難しい、うまく書けない、ということでした。なぜだろうと、いつも考え込んでしまいます。もちろん、他にも理由があるのだと思いますが、ひとつはテーマが絞りきれていないからなのかもしれません。テーマを絞り、視点を絞り、言葉を絞る。次に書く作品は、それを意識していきたいと思います。

『ローグ・ワン』はすごい映画だった

わたしが初めて『スター・ウォーズ』を観たのは、確か小学校6年生か中学校1年生のころです。ショックのあまり、上映が終わっても席から立てなかったことを覚えています。ご多分に漏れずハマってしまい、野田昌宏さん訳の小説版の初版本を買ったり、エックスウィングやワイウィングなどの戦闘機の絵を描いたりしていました。当時、わたしは演劇部に所属していたのですが、文化祭で『スター・ウォーズ』のスピンアウト的な劇もやりました。そう言えば、シナリオも書いたのですよね。

ただ、一つだけ、子供心にも『スター・ウォーズ』を観て納得いかない点がありました。それは、「いくら弱点とはいえ、あんな小さな爆弾一発で、あの大きなデス・スターが破壊されてしまうものだろうか」ということでした。子供だったわたしにとって、その一点が『スター・ウォーズ』はリアリティのない所詮マンガでありファンタジーに過ぎない、という折り合いの付け方をせざるを得なくさせるものでした。

そのまさに35年間のもやもやを『ローグ・ワン』は氷解させてくれたのでした。あの弱点は設計上のものではなく、意図的に組み込まれたもので、しかもその背景にはあれほどの人間模様と多くの犠牲があったのだと。おそらく、ジョン・ノール、ゲイリー・ウィッタ、クリス・ワイツ、ギャレス・エドワーズあたりも、その点がずっともやもやと納得いかなかったんじゃないでしょうか。それをこの作品を描くことでスッキリしたかったのかな、などと観ながら思っていました。

次に印象的だったのは、シナリオの巧みさでした。序盤のいくつもの場所で発生するイベントをきれいに終盤のスカリフへ収束させていく流れ。主人公のジンと父親のゲイレンの物語、キャシアンら反乱軍のスパイたちの人生、悪役のオーソンの失脚・蹉跌、チアルート、ベイズの友情など脇役にも手を抜かないディテール。すべての要素が、あのラストシーンの輸送船タンティヴIVにおけるレイア姫の台詞「『希望』です」に凝結していきます。レイア姫が登場したときは、鳥肌が立ちました。

登場人物やそれを演じる役者たちも素晴らしかったです。ゲイレン役のマッツ・ミケルセン以外はわたしは全然知らない俳優・女優ばかりでしたが、みな上手かった。わたしはキャシアン役のディエゴ・ルナの悲哀に満ちた演技がよかったと思いました。子供のころから暗殺者やスパイとして働かざるを得なかった彼が、ついに死に場所を見つけたときの嬉しそうなこと!

アメリカ映画ならではのお遊びもたくさんありましたね。ドニー・イェン演じるチアルート・イムウェは明らかに「座頭市」のオマージュですね。それから、ターキン総督などの懐かしいメンバーの再登場(彼がCG合成であることは事前に知っていました)。レッドリーダーとゴールドリーダーも出ていましたね。あれも合成なのでしょうか。ネタとして残念だったのが、ウェッジ・アンティリーズが出てこなかったことです。フォースなしで戦えるキャラとしてはチアルート以上の猛者です。最後のドッグファイトでは姿を見せて欲しかった。

久し振りに映画を観て泣きました。泣いたのは、エンドクレジットで。これだけのエンタテインメントを作った人たち、監督、シナリオライター、全ての関係者の方々に対する、賛辞と、歓喜と、そして嫉妬の涙でした。ああ、わたしもこういう創作をしたい、エンタテインメントを書きたい。自分はこの30年近く、何をやって来たんだろう、そういう涙でした。そういう意味で、わたしの創作意欲をグサグサと刺激してくれる作品でした。文句なしの傑作です。

Freewriteは小説執筆に使えるか?

Freewriteとは

Freewriteとは、クラウドファンディングで資金を集めて作られた、「現代のタイプライター(現代のワープロ)」ともいうべき、執筆専用のガジェットです。Wi-Fi機能を持っていてネットワークに繋げることはできますが、ウェブを見たり、メールをチェックしたり、当然Twitterをすることもできません。ただ、書いた成果物をクラウドに保存するためだけにネットワークを使います。文字通り、「執筆すること」しか考えていません。そういう意味では、日本で発売されているキングジムの「ポメラ」と非常に似たコンセプトを持ったガジェットといえます。

特徴

主な特徴は以下の通りです。

  • E Inkスクリーンを使用している。
  • ドイツのCherry社が製造しているメカニカルキーボードをフィーチャーしたキーボードを使用している。
  • 100万ページのドキュメントを保存可能。
  • Wi-Fiによるクラウドサービスとの連携。
  • 国際言語対応(日本語も対応済み)。
  • アルミニウムの堅牢なボディと収納可能なハンドル。

良い点

  1. スクリーンは見やすいです。日本語フォントも美しく表示されます(ゴシック体のみ)。
  2. キーボードは打ちやすいです。最近のMacの薄っぺらいキーボードに比べると格段に打ちやすいです。
  3. オリジナルのクラウドサービス以外に、Evernote、Dropbox、Google Documentに連携することができます。
  4. 日本語、中国語、韓国語などのマルチバイト言語にも対応しています。
  5. 書くことしかできないので、執筆に専念できます(結構大事)。
  6. 昔のアメリカの文豪気分を味わえます。

悪い点

  1. 日本語の変換精度はそこそこ。ATOKを期待していると厳しいです。
  2. 保存先フォルダが3つのみです。ただし、それぞれのフォルダの中にはファイルはいくらでも作れます。
  3. いわゆる「バックスペースキー」しかありません。
  4. 「ページダウンキー」と「ページアップキー」はありますが、編集箇所を移動することができません。

小説執筆に使えるか?

結論から言うと、ショートショートや短編、もしかしたら中編程度の小説であれば使えると思います。これは、Freewrite単体ではプロジェクト全体の俯瞰が難しいので、執筆者の能力に依存します。全部頭の中にプロットが入っており、頭の中だけで全体を管理できるのであれば、おそらく長編も可能でしょう。

これはFreewriteのコンセプトの特殊性から来ています。Freewriteは、とにかく書くことに集中し、書き進むことを第一に置いています。「ページダウンキー」と「ページアップキー」はありますが、参照するだけで編集箇所を移動することができませんし、文字の削除は「バックスペースキー」を使うしかありません。執筆の途中で編集箇所を変えてウロウロすることをFreewriteが推奨していないことが分かります(詳細はこちらを。Freewriteはあくまで「草稿」ツールであり、「編集」ツールではありません)。

Evernoteと連携した場合、そのノートは編集ができません。したがって、他のアプリで編集したいときはコピペする必要がありますし、他のアプリで編集したものをFreewriteに戻すことができません。Dropboxであれば、同期したファイルを開いて他のアプリで編集することができるようですが、わたしが試してみた限りではうまく同期してくれませんでした。現段階では、Freewriteで書き始めたらFreewriteだけで完結する必要があります。

個人的には、Scrivenerと連携が出来るようになるといいなぁとは思います。Scrivenerでプロジェクトの全体を管理し、個別の章や節をFreewriteで執筆する、というスタイルがワークフローとしてシームレスにできれば、かなり生産性の高いツールとなるのではないでしょうか。私の頭はそんなにキャパシティが大きくないので、Freewrite単体だと、せいぜいブログの記事くらいしか書けないような気がします。

タイプライターとかワープロに憧れがある人や、パソコンだとどうしてもネットで時間を無駄にしてしまう、という人には一つのソリューションになるでしょう。執筆専用というだけなら、ポメラの方がコストパフォーマンスもいいし、ATOKが使えます。Freewriteの方がキーボードが打ちやすいとは言っても、値段を考えると微妙なところです。つまるところ、ダンジョンズ&ドラゴンズ的なゲーム世界でたとえるならば、いわゆる「ロマン武器」という位置づけになるのではないかと思います(ロマン武器大好き^^)。わたしはブログの下書きや、執筆のアイディア出し、気分転換に文章を書き散らすときに使っています。

Scrivenerで書いた原稿をInDesignで整形する方法

昨年は一太郎による執筆にハマっていたわたくしですが、今年に入ってからScrivenerとInDesignによる執筆にハマっております。今の執筆スタイルは、以下のフローになっています。

  1. Scrivenerで「青空文庫記法」で原稿を書く
  2. Compileしてプレーンテキストに出力する
  3. InDesignにCompile済みのテキストを読み込む
  4. InDesignでルビを変換
  5. InDesignタグ付きテキストで出力
  6. InDesignタグ付きテキストの傍点該当部分を検索・置換する
  7. InDesignタグ付きテキストの「章」に「大見出し」のタグを付ける
  8. InDesignタグ付きテキストをInDesignに読み込む
  9. InDesignでPDFに出力

これでScrivener側で期待していたとおりのフォーマット

  • ルビを表示
  • 傍点を表示
  • 章で改ページ

を実現できます。以下、備忘録としてそれぞれやり方をまとめておきます。

Scrivenerで「青空文庫記法」で原稿を書く

わたしが使っている青空文庫記法は2つだけです。

  • ルビ 青空文庫《あおぞらぶんこ》
  • 傍点 ○○[#「○○」に傍点]

Compileしてプレーンテキストに出力する

Compileの設定で変更してあるのは次の通りです。それ以外はデフォルトのままです。

Contents Format

InDesignにCompile済みのテキストを読み込む

レイアウトグリッドの設定は30字×40行をA4に収めるのであれば次の設定がよいかと思います。縦組みグリッドツールを配置してその中にテキストを「配置」で流し込みます。

LayoutGrid

InDesignでルビを変換

これは既存のスクリプトを使わせていただきました。あるふぁさん、ありがとうございます。

InDesignタグ付きテキストで出力

グリッドツール内のテキストを全選択した状態で、「ファイル」ー「書き出し」で「Adobe InDesign タグ付きテキスト」を選びます。

 InDesignタグ付きテキストの傍点該当部分を検索・置換する

出力したInDesignタグ付きテキストの傍点該当部分をテキストエディタで編集します。置換条件は以下の通り。20文字を超えた傍点は振らないようにしています。

Find replace

InDesignタグ付きテキストの「章」に「大見出し」のタグを付ける

InDesign側で新規に文書を作り、「大見出し」の段落スタイルを作っておきます。「段落分離禁止オプション」の「段落の開始位置」を「次のページ」にします。

Danraku style

テキストエディタ側では、「章」のところのタグを編集します。

<pstyle:大見出し>第一章 ○○

InDesignタグ付きテキストをInDesignに読み込む

上記で作った新規文書にテキストエディタで編集したテキストを読み込みます(「配置」します)。自動的に傍点が振られ、章ごとに改ページも行われているはずです。

 InDesignでPDFに出力

メニューの「PDF書き出しプリセット」からお好きなものをどうぞ。

一太郎

わたしが初めて買ったパソコンは、1986年に東芝が発売したラップトップパソコン「J-3100」でした。まだDynaBookシリーズが出る前。OSはMS-DOS、フロッピーディスクモデルで、オレンジ色のプラズマディスプレイを採用していました。重さは7キロ弱、価格はなんと70万円近くもしました。

当時AppleのMacintoshが100万円を超えていた時代です。欲しくて欲しくてたまらなかったMacに手が届かなくて、でも当時日本で流行っていたNECのPC98はどうしても肌に合わず、悩んだ挙げ句に買ったのがこのパソコンでした。そしてその時、一緒に買ったソフトウェアが「一太郎」でした。

当時の私は商社の財務部門に所属しており、資金の運用調達が主な業務でした。当然、仕事に使うものであれば、買うべきソフトウェアはDOSで動く表計算ソフトとしては名高かったLotus1-2-3だったはずです。しかし、買ったのは一太郎。パソコンで動くワープロソフトと言えば一太郎だったのです。今考えてみれば、やはり文章を書くという行為自体に憧れがあったのだと思います。喜々として一太郎で文章を書いていた記憶があります(何を書いていたかは、さっぱり覚えていません)。

一太郎2016を買ったのは、ちょっとした気まぐれでした。ゲーマーでもあるわたしは、Windowsパソコンも持っています。たまたまゲームをしていたわたしは、DropBoxに保存してあった数年前に書いた小説のテキスト原稿を開き、Windowsのメモ帳で表示させました。MS明朝。Macで使っているフォントと比べると正直、美しさでは劣るフォントです。しかし、なんとも言えない懐かしい気持ちになりました。

数分後には、一太郎2016を買っていました。そして、一太郎で小説の原稿を読み込んでみると、そう、あの東芝のJ-3100で、DOS版の一太郎で文章を書いていたときの記憶と感覚が突然蘇ってきたのです。涙がこぼれそうになりました。あの喜々として文章をただただ書いていたころの、万能感とも陶酔感とも形容しがたい感覚です。

わたしは、いま来年の新人賞の原稿を一太郎で書いています。この一年半ほど、どうしても筆が進まなかったわたしの筆を進めてくれたのは、一太郎で蘇ってきた「あの」感覚でした。書くことが楽しくて楽しくてしょうがなかったあのころ。わたしは書くことがあんなに好きだったんだと、思い出すことができました。

そんなこんなで、いま、愛用のMacBook AirにBootcampでWindows10をインストールし、一太郎をインストールしました。他のアプリは一切入れていません。いわば一太郎専用機。なんとも時代錯誤もはなはだしいですが、ワープロ専用機としてMacBook Airを使っています。大好きなMac上で一太郎を使い文章を書くという贅沢。いまはその贅沢を心から味わおうと思います。

Simplicity2で本文のみ段落の頭を字下げする方法

段落冒頭の字下げ(インデント)について

小説や雑誌など、特に紙に印刷されている本では、本文の段落の頭ごとに一文字字下げされるのが作法とされています。これは、「…」(三点リーダー)を使うときには二つ続けて使うこととか、「!」(エクスクラメーションマーク)のあとには全角空白を入れることといったお作法と同じレベルのものです。

一方、インターネット上でウェブのコンテンツを見てみると、有名サイトでも上記のお作法を守っているところは多くありません。ウェブの場合はパソコンやスマホでの見た目や読みやすさが優先されるのでしょうか。ただ、比較的コンテンツ重視の、小説を載せているようなサイトでは、紙の本と同じ作法を守っているところが多いように思えます。

このサイトの方針

このブログでは、曲がりなりにも小説家志望の人間が文章を書いているので、できるだけ紙の本と同じ体裁は整えてみようと思っています。最初はそれ以外にも、フォントを明朝体にしてみようかとか、縦書きにしたりしてみようとか、いろいろ試行錯誤もしてみましたが、結局、フォントや書式についてはパソコンやスマホで読みやすいものにする、という結論に落ち着きました。

Simplicity2で「本文のみ」字下げをする方法

さて、通常ブログで段落の冒頭を字下げするには、CSSで以下の記述をすれば良いです。

p {
    text-indent: 1em;
}

しかし、これだとこのブログで利用しているSimplicity2では本文のみならず見出しやブログのパーツまでが全部インデントしてしまいます。そこで、Chromeのデベロッパーツールで本文部分の要素を確認してみると、本文部分には「#the-content.entry-content」という名前が割り振られていることが分かります。そこで、以下のようにCSSを記述すると、本文のみ字下げさせることができました。

#the-content.entry-content p {
    text-indent: 1em;
}

あ、そうそう、もちろん、CSSは子テーマの方に記述しましょう。また、Windows版のChromeでは、一度キャッシュを削除してから再読み込みをしないとCSSの変更が反映されませんでしたので、念のためお伝えしておきます。

Simplicity2の拡張CSSデザインをMarsEditのプレビューに反映させる方法

WordPressのテーマは「Simplicity2」

WordPressでブログを始めるにあたってわたしが選んだテーマは「Simplicity2」です。わたしがいいな、と思ったところは、以下の通りです。

SEO対策がプラグインなしでできる

通常SEO対策は「All in One SEO Pack」や「Yoast SEO」といったプラグインを使用して行うことが多いようですが、そういったものを使わずに、テーマをインストールしただけでシンプルにSEO対策ができます。

デザインがシンプルで標準の設定でカスタマイズができる

よっぽど凝った複雑なことをしない限りは、標準の設定(カスタマイズ)を変更するだけでかなりの変更を加えることができます。デザインもシンプルで飽きが来ないです。また、SNS対応もカスタマイズで対応できます。関連する記事を表示したり、レスポンシブデザインも特別なプラグインなしに実現できます。

拡張CSSデザイン

Simplicity2は拡張CSSを用いることによって文字や文章に対して様々なデザイン的効果を与えることができます。基本的にこのブログは文字中心のサイトなので、地味になりすぎず、嫌みになりすぎない程度のデザインが実現できるのは嬉しいです。

Simplicity2の拡張CSSデザインをMarsEditのプレビューに反映させる方法

とても都合の良いSimplicity2の拡張CSSなのですが、MarsEditで本番環境のデザインと同じプレビューを実現しようとすると、ただSimplicity標準のCSSをPreview Templateに取り込んだだけでは反映されません。CSS拡張クラスを記述したファイルはWordPressのダッシュボードからは見ることができないので、FTPなどで取得してから中身をエディタで開いてコピーし、MardEditのPreview Templateに貼り付けてください。ファイルは以下の場所にあります。

/wp-content/themes/simplicity/css/extension.css

ちなみに、WordPressのビジュアルエディタでもこの拡張CSSを反映させたい場合は、ダッシュボードから「テーマの編集画面」を開き、CSSの内容をeditor-style.cssにコピペするとよいです。